犬の社会化
犬の社会化
犬の社会化期とは、犬が本来持つ本能的な能力や行動において、これらが人間社会では問題とされる行為を防ぎ、犬が人間社会と共生する事を目的に馴致、教育する期間の事です。
犬の本能的な能力や行動の代表的なものの中で、人間社会では問題行動とされる代表格が、「吠える」「唸る」「咬む」です。この3つの行為の殆どは、犬が自身の危険や不利益を感じ自らを防衛することや優位に立つ為に行います。
例えば弱肉強食な自然環境の中、同種や他の動物に対し打ち勝たねば生存できない環境下においては上記3つは大変重要な行為です。しかし人間社会で生きる上で人間に対してこの行為を行うことは、人間にストレスを与え、双方を傷つける事となり、最悪の場合この様な犬は殺処分されます。
この最悪な事態を防ぐ為に、犬に人間社会に適応出来る時期、生後1ヶ月目から生後8ヶ月目までの間に必要な教育を行うのです。(※社会化期の名称や期間は諸説あります。)
生後1ヶ月目から生後2ヶ月目
母犬や胴体犬と十分に遊びやコミュニケーションを取った生後2ヶ月目以降に、少しずつ犬との関わりを減らし、人との関わりに重点をおきます。日頃から犬にとって触られるのが苦手な耳、口元、指、肉球を穏やかな気持ちで撫で、スキンシップを取ります。
生後3ヶ月目から生後4ヶ月目
3ヶ月目から4ヶ月目になると、ワクチン接種も終わり屋外に出ることも出来ます。感受性豊かに五感を活発に働かせ、何でも興味津々で全てのものを口に入れ、全てに全力で挑みます。自我が芽生える前段階で「怖い」より「興味」が勝るこの段階に犬が本能的に苦手な「人間の子供や男性、老人」「サングラスや帽子、ヘルメットの類」「自動車や電車などの大きな動く物」「雷や花火などの突発的な音」そして「知らない犬や猫など他の動物」に合わせ経験させ馴致させることが重要です。
ただ、上記の物や環境にただ放てば勝手に慣れると勘違いする方も少なくありません。特にすでに自我が芽生え「怖い」を理解した犬に対し「サングラスをかけた男性に抱っこしてもらえば良い」や「他の犬がいるドッグランの中に放てば良い」と安易に考え、飼い犬は心底恐怖を覚えてしまい問題行動を起こす事はよくあります。
犬の抱き方やケアもわからない人、他の犬に支配的な行動をとる犬に会わす事は逆効果であり、親である飼い主が合わせる人や犬、環境を見極め、不測の事態を予想しすぐ子犬にケアが出来る体制が必要です。
生後4ヶ月目から生後8ヶ月目
4ヶ月から8ヶ月になると、体も大きくなり自我も芽生え、経験したこと無い事・物に対し活発な性格は「吠える」、臆病な性格は「怖がる」などの個体差がはっきり出てきます。この時期に飼い主と犬が信頼関係を構築されていれば、修正はし易く、良い行いをした時にはよく褒め、好ましくない行動をとった時は何が悪かったのか分り易くシンプルに注意すれば理解してくれます。
生後8ヶ月前後の問題行動について
逆に8ヶ月前後に「突然」問題行動を起こす犬達もいます。大体の飼い主は「何もしなくても賢かったのに」と言われます。
大抵は、生後2~3ヶ月の子をペットショップで購入され、平日は飼い主が朝から出勤し帰宅する夜まで長時間の留守番をさせ、十分なスキンシップや必要な経験がされぬまま、成犬と成ります。
社会化が必要な時期の大半を屋内で過ごし、突然に人間社会に連れだされた成犬は恐怖でしかなく、耐えるしかありません。そして「必然」、その日がやって来ます。要因は様々ありますが、主に「何もしなかった」飼い主が安易な行動をとり、限界を超えた飼い犬は防衛本能を出し、自分自身を護る他無く、恐怖を覚えた相手に対し「吠え」「唸り」そして「咬む」のです。
すでに飼い主と飼い犬との関係性は崩れ、人間社会やその他にストレスを感じる度、飼い犬は問題行動を起こす事でストレスを発散します。犬を飼われる方、特に子犬から飼われる方は、ご自身が犬を飼養できる環境であるかよくお考え頂きたい。教育に多くの時間が必要で病気をすれば看病や多額の費用もかかります。
犬が居たら可愛いから、ひとり暮らしで寂しいからなど安易な気持ちで飼う(買う)ことは控えて頂きたい。飼い犬と良い関係を構築された飼い主は、自らの時間を飼い犬と共有し、そして捧げています。